第1回 広島中央ロータリークラブ研修セミナー

開催日

2023年6月1日

場所

リーガロイヤルホテル広島 33階 「リーガトップ」

講師

田原榮一会員

講演内容

先ず、今夕、我がクラブ研修セミナーが3年ぶりに開催されること誠に同慶に絶えません。会長・幹事、三宅委員長他関係各位に厚く御礼を申し上げます。

さて、今夕のセミナーは、クラブ入会5年未満の会員各位を対象に、ロータリーの基本理念である「奉仕の理念:The Idea of Service」と「職業奉仕」に核心を置いて概説したいと思います。

その前に、ロータリーはどのような組織なのか、そして、どのように誕生し拡大したかを 簡単に触れてみたいと思います。

そこで、先ず、私の著書の60ページを開いでください。

先ず、ロータリーの組織構成ですが、国際ロータリー・Rotary International RIは、全世界のロータリークラブとローターアクトクラブの連合体であり、RI会長と理事会で構成されています。そして、ロータリークラブを束ねる地区があり、日本には34地区あり、地区がバナーはRIの役員です。尚、広島中央ロータリークラブは、広島県と山口県の72クラブから構成される第2710地区のグループ7に属しています。ゾーンは、会長指名委員とRI理事指名委員を選挙するためにRI理事会が定めたクラブ集団であり、全世界で34あります。他方、RIのためのロータリー財団があり、財団管理委員会によって管理運営され、構成メーバーの多くは、RI会長経験者や理事経験者です。また、日本では、ロータリー財団とロータリー米山記念奨学会が存在します。因みに、クラブ会員数は、全世界で約118万人、日本では約8万5千人、クラブ会員数は、21世紀に入り、120万人を切り、減少し続けいます。尚、RIには、RI定款・細則、そして標準クラブ定款を改訂する権限を持つ立法機関である規定審議会があり、全世界の地区からの規定審議会委員によって構成されています。この規定審議会は3年に一度開催され、今日までロータリーの改革に大きく関与してきました。

次に、ロータリーはどの様にして誕生し、拡大したのでしょうか? ページ61のロータリーの誕生と拡大を開いてください。ロータリーは、アメリカ人、シカゴの弁護士、35歳のポール・パーシ・ハリスによって創設されました。彼は、顧客であった3人の仲間、シベスター・シール、ガスターバス・ローア、ハイムラ・ショーレーと共に、1905年2月23日にシカゴ・ロータリークラブを創設しました。それは、一業種一会員からなる相互扶助を目的とした社交クラブであり、クラブの名称は、当時、例会が会員の事務所の持ち回りで行われたことに由来して、ポール・ハリスの提言によりRotary Clubとなりました。

それでは、何故、ポール・ハリスはロータリークラブを創立したのでしょうか?ページ62に記載されている様に、それは、彼が、喧騒たる大都市シカゴの生活において孤独感にさいなまれ、親睦・友情を通じた仲間との出会いを強く求めていたとのことであります。シカゴRC創立1年後に、定款と綱領が決まりました。その綱領の1と2は、会員の相互扶助と親睦でしたが、翌年には、ドナルト・カーターの提言により社会奉仕が加わりました。その結果、アメリカの各都市にRC が拡大し、更には、1912年には国際ロータリーの設立へと発展しています。因みに、日本には1920年10月に東京RC が結成され、一昨年創立100周年を迎えましたが、1940年に第二次世界大戦のため、日本のRCはRIから脱退、しかし、1948年にはRIに復帰しています。

それでは、誰がロータリーの拡大に貢献したのでしょうか?それは、シカゴRC創立3年目の1908年に入会した二人の重要人物が関与しています。その一人は、チャスリーR・ペリーであり、彼は、クラブ内の意見対立の調整に務め、全米RC連合会の設立へ大きな力を発揮しました。また、ペリーは、RI事務総長を32年間務め、職業は社会に対する奉仕の機会であると、職業奉仕の重要性を強調しました。(私の著書の文章「機会」の前に「奉仕の」を入れてください)
ここで、ポール・ハリスの語録を紹介しましょう。

ロータリーは、適切な方式を考え出された事実だけで、大きくなったのではないのです。拡大しようという、たゆまない努力あったからこそ、ロータリーは世界的に影響力を持つ様になったのです。

ポール・ハリス

次に、もう一人のロータリー拡大の貢献者は、ページ63に記載されている様に、ロータリー哲学・奉仕の理念の提供者であるアサー・フレデリツク・セエルドンです。彼は、「経営学は人間に対する学問」であること、そして、「ビジネスにおいて、奉仕とは顧客に満足を与える」ことを強調しました。そして、「He profits most who serves best, 最も奉仕する者は、最も多く報いられる」という奉仕の理念を提言しました。これは、後に、ロータリーのモートの第2標語となりました。尚、現在では、HeはOneになっています。それは、ロータアクトクラブが jointした結果です。次のページ64を見てください。第1標語は、フランク・コリンが提唱した「Service above self, 超我の奉仕」ですが、これは、最初は「Service not self」でした。ここで、一つ言及したいことは、セエルドンは、自分の提言が第2標語になったこと等を含む様々な意見対立から、後にロータリーを退会しています。

そこで、今日のセミナーの課題であるロータリーの基本理念「奉仕の理念」について概説したいと存じます。

奉仕の理念(The idea of service)とは何か?

それは、先ほど説明しましたロータリーのモットの第1標語と第2標語が含まれます。更に、チャスリー・ペーリは「他人への思いやり、他人の助けになること(thoughtfulness of and helpfulness)と定義しています。

それでは「service:奉仕」とは何でしょうか?それは、「人々との助けになること、社会に役立つこと、世のため、人のために尽くすこと」です。我々の人生、職業、ロータリーの真の目的は「人に喜びを与えること」であり、まさに、「奉仕の理念」はその根幹であることを留意してください。

ここで、2022年手続要覧のページ3の「社会奉仕に関する1923年の声明」の1)、或いは、私の著書のページ64、セントルイス大会での決議23−34の社会奉仕に関する声明文を紹介したいと思います。即ち、『ロータリーは、基本的には一つの人生哲学であり、それは、利己的な要求と義務及びこれに伴う他人のために奉仕したいという感情との間に常に存在する矛盾を和らげようとするものである。この哲学は、奉仕〜「超我の奉仕」〜の哲学であり、これは、「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」という実践的な倫理原則に基づくものである』とあります。皆さん、ロータリーの哲学である「奉仕の理念」をご理解いただけましたでしょうか?

そこで、2022年手続要覧のページ5、或いは、私の著書のページ68−67に記載されている「ロータリの目的」を開いてください。「ロータリーの目的」は、意義ある事業の基盤として奉仕の理念を奨励し、これを育むことことであるとされています。具体的には、4つの項を奨励しています。

  • 第一 知り合いを高めることによって奉仕の機会とする(文章の「に」を「の」に修正)これは、クラブ奉仕に関係します。
  • 第2 職業上の高い倫理基準を保ち、役立つ仕事は全て価値あるものと認識し、社会に奉仕する機会としてロータリアン各自の職業を高潔にすること。これは、職業奉仕に相当します。
  • 第3 ロータリアン一人一人が、個人として、また事業及び社会において、日々奉仕の理念を実践すること。これは、社会奉仕に関係します。
  • 第4 奉仕の理念で結ばれた職業人が、世界のネットワークを通じて、国際理解、親睦、平和を推進すること。これは、国際奉仕に相当。

これらロータリーの目的の4つの項は、「奉仕の理念」を実践する土台であり、その内、第2項の「職業奉仕」について、少し触れたいと思います。

私の著書のページ66の「職業奉仕の変遷」を開いてください。

そこに記載されているごとく、20世紀ではロータリーの金看板と言われてきた「職業奉仕」を振り返りますと、1912年、先ほど触れました、2つの標語の採択、更に、1915年には、職業倫理規定のロータリー倫理訓ができました。1931年には、職業奉仕がRIの目標に設定され、1934年に、ハーバート・テイラーの「四つのテスト」が採用。しかし、1948年には、職業奉仕委員会の廃止とともに倫理訓も廃止されました。

しかし、36年後、1987年、RI会長チャールズC・ケーラー会長によって職業奉仕委員会が復活し「職業奉仕に関する声明」:職業奉仕はクラブと会員個人の両方の責務でると強調しました。

そして、今日、職業奉仕は、全てのロータリアンが倫理と高潔性を持って仕事にあたるとされています。それには、ロータリアン個人の倫理道徳と向上という個人レベルの責務と、職業の知識やスキルを社会のニーズの解決に役立てるというボランティアレベルの責務という両方が含まれます。

そして、職業奉仕の実践強化には、「四つのテスト」の言行と「ロータリアンの行動規範」の遵法が必要であり、我がクラブでは、例会でそれらを唱和しています。

以上、これまで、「奉仕の理念」と「職業奉仕」について、やや論理的に説明して来ましたが、ここで、それらの実践を理解していただくために、私のロータリーモーメントを披露したいと思います。

私は、昭和56年7月、今から42年前、広島中央ロータリーのチャターメンバーの故柚木 宏先生の推薦により、ロータリーに入会しました。当時は、43歳、広島大学医学部第一病理教授就任3年目、毎週開かれる例会が月曜日であり、最初は入会に躊躇しました。しかし、病気の原因を探究する病理学者として、「医の医学」ではなく、「医の法学」、「医の政治」、「医の経済」、「医の社会」等を学ぶ必要がある考え、ロータリーに入会しました。

当時の広島中央クラブは、創立3年目、明るく和なクラブであり、多様な企業人・職業人達の方々と親睦を深めるとともに、ロータリーの「奉仕の理念」と「四つのテスト」に共感しました。事実、現職時代、教室のがん研究や運営に「四つのテスト」を導入して、誇れる分子病理教室を確立すると共に、多くの教授が誕生しています。

翻って、ロータリアンとして、今日まで42年間、忘れることが出来ない三の奉仕活動の実績を紹介したいと思います。

先ず一つ目は、公益財団法人広島がんセミナーの設立です。それは、先ほど言及したチャターメンバーのクラブ第3代目会長の故柚木 宏先生、5代目会長の故城本正昭氏(城本健司会員のお父上)、そして、7代目会長の柚崎 博(広島そごう初代支店長)の3名の献身的な支援と協力の結果あります。それは、まさに、ロータリアンの強力なリーダーシツプによる「奉仕の理念」の結晶であり、ロータリーに感謝です。

因みに、広島がんセミナーは、今日まで30年間、国際シンポジウム、県民公開講座、先端的がん薬物療法研究会等の学術集会の開催やがん関連学会への助成事業に取り組み、我が国のがん研究・診断・治療の大きな牽引力として活躍しています。

なお、広島中央ロータリークラブの多くの会員の方々が、広島がんセミナーの役員や賛助会員として管理・運営に関与していただいており、それらの会員の方々にRespectと感謝です。

二つ目は、私が2016-17年度、国際ロータリー第2710地区ガバナーの責務を果たすことができたことです。加えて、広島中央ローターアクトクラブをも提唱しました。それらは、橋本代表幹事、緒方地区大会実行委員長・黒瀬クラブ会長・大久保幹事等を含む我がクラブ会員全員の支援と協力、及び12名のガバナーの補佐のお陰であります。それは、まさに、「ロータリーの超我奉仕」の結晶であります。加えて、ガバナークラブ公式訪問に関して、橋本代表幹事を初め山野井、宗正、大阪等の会員有志が、地区74クラブを一つ一つ個別クラブ公式を自家用車で遂行することができました。改めて、心からの感謝の意を表したいと存じます。

尚、私は、2026-17年度RI会長のジョン・ジャーム氏のテーマ「Rotary Serving Humanity,人類に奉仕するロータリー」を受けて、私のガバナー信条を「職業奉仕の中にこそ幸福(幸せ)と平和がある」“Vocational service only brings about happiness and peace ” としました。そして、職業奉仕の実践強化の一つとして、地区がん予防推進委員会を立ち上げ、地区全クラブは、「がん予防の新12か条」を掲げ、がんの一次・二次予防の推進、青少年へのがん教育、がん患者の就労支援等を実践しました。それらの業績は、2019年の「ロータリーの友」12月号の特集として大きく報道されたのであります。更には、現在なお、藤村先生と児玉先生の職業スキルを活かしたがん予防推進事業の奉仕活動と、我がクラブの「がん予防啓発推進委員会」とが継続しています。

三つ目の忘れることの出来ないことは、地区ガバナーの後、国際ロータリー第2540地区(秋田)の2018-19年度地区大会において、RI会長代理の責務を果たすことが出来たことであります。それは、地区大会の二日間、RI会長代理として、RI会長のテーマと方針、新しいビジョン声明、新しい戦略計画の優先事項等を伝導するとともに、健康経営につながる「がん予防推進事業」を推奨しました。加えて、地区大会での大曲の花火大会と、無二の友である秋田の同期ガバナー平澤孝夫ご夫妻のおもでなしは、我々夫婦にとって大きな財産となっております。

以上、ロータリーの哲学「奉仕の理念」と「職業奉仕」の実践例として、私のロータリーモーメントを紹介しましたが、皆様、ご理解いただけましたでしょうか?

結語を申し上げます。

116年前、親睦と奉仕を中心として始まったロータリーは、これまで、様々な改革や戦略計画を遂行したのにも関わらず衰退の兆しを示し、今後如何に改革し蘇るかという岐路に立っています。事実、私の著書のページ75のロータリーの未来形成に記載されている様に、2030年には、現在の地区制度は廃止され、ロータリーの組織構成が大きく変わります。私は、一昨年、辰野RI理事から、今後の組織体制を話し合うオンライイン座談会に招待され、「新ガバナンス体制」が示され大変驚きました。事実、昨年から、この改革案がパイロット地域で実施されています。

しかし、皆さん、私は、今後のロータリーが時代とともに変化する組織や新しい戦略計画を導入しようとも、「奉仕の理念」と「職業奉仕」は常に同居しなければならない、言い換えますと、堅持しなければならないことを強調したいのであります。まさに、松尾芭蕉の謂う「不易流行」です。

終わりに、今夕のセミナーを通じて、皆様方が、ロータリーの「奉仕の理念」と「職業奉仕」を理解し、実践され、今後、元気で生き生きと、我がクラブ創立50周年に向かって、魅力あるクラブ創りに邁進されんことを心から期待し、私の講話は終わりたいと存じます。

ご清聴有難うございました。