第2076回例会 ゲスト卓話「未来ある子供たちへ」

未来ある子どもたちのために

株式会社シップ 代表取締役 大塚裕美

私は障がいのある子どもたちとその家族を支援する相談支援事業を行っています。今日は、私自身の体験を通して感じた「未来ある子どもたち」についてお話しします。

娘の事故とリハビリを通して

私はもともと介護の現場で働き、2018年に介護コンサルティング会社を設立しました。しかし、その後、私の人生を大きく変える出来事が起こります。娘が大学生のとき、青信号で横断歩道を渡っていた際に車にはねられ、意識不明の重体となったのです。

1か月以上意識が戻らず、「今日か明日か」という日々。奇跡的に目を覚ました娘でしたが、その後は過酷なリハビリが待っていました。医師からは「もう一度子育てをしてください」と言われ、絶望の中で「高次脳機能障害」との診断を受けました。

障がいを受け入れることができず、ひとり親として頼れる人もいない状況の中で、「障がいを持つと、こんなにも生きづらい社会なのか」と痛感しました。この経験から、「誰もが一人ひとりに寄り添える場所をつくりたい」という想いが芽生え、相談支援事業を立ち上げました。

見えてきた現実

相談支援の現場で感じるのは、18歳を境に支援の仕組みが大きく変わる現実です。子どものうちは学校・医療・福祉・地域が連携して支えますが、高校を卒業すると関わる人が一気に減ります。社会との接点を失い、自信をなくしてしまう若者も多いのです。

広島市内だけでも放課後等デイサービスは300件を超えますが、就労準備型の施設はごくわずか。中高生の居場所が少なく、「学校と自宅だけ」という生活に閉じ込められている子どもたちが多くいます。

私はこの現状を変えるため、就労準備型放課後等デイサービスを今年7月に開設しました。ここでは金銭管理、交通機関の利用練習、料理、社会見学、ピラティスによる体幹トレーニングなど、社会に出るための実践的な体験を行っています。ちなみに、ピラティスを教えているのは、あの事故で生還した私の娘です。

子どもたちの希望

子どもたちは、障がいがあってもみんな「誰かの役に立ちたい」「好きなことを続けたい」「自分の居場所をもちたい」と願っています。ある子は初めて台所に立ち、お味噌汁を作れるようになりました。別の子は初めての担当者会議で、自分の思いを自分の言葉で伝えられるようになりました。小さな一歩ですが、確かな成長です。

一方で、障がいのある子どもたちは「社会との壁」に直面しています。進路への不安や、できないと思われる孤立感。こうした課題が、子どもたちの未来を信じる力を弱めてしまうことがあります。だからこそ、私たち大人が彼らの可能性を信じ、環境を整えることが必要です。

地域と企業へのお願い

未来ある子どもたちのために、是非、ロータリークラブの皆様の企業や地域にもぜひ協力をお願いしたいと思います。インターンシップや職場体験、ボランティアの受け入れなど、社会への小さな扉を開いていただくだけで、子どもたちに大きな希望を与えられます。

子どもたちが育つ環境は、地域や企業の未来にも直結します。障がいの有無にかかわらず、一人ひとりが社会の大切な一員であることを伝えていくことが、私たち大人の責任だと感じています。

終わりに

「未来ある子どもたちのために」――それは、私たちが可能性を信じて背中を見せることから始まります。子どもたちの笑顔が地域の希望となり、その輪が企業や社会をも豊かにしていくと信じています。

どうか皆さまも、この想いを共にしていただけたら幸いです。

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