第2050回例会 ゲスト卓話「命を守るチカラ 天気と防災」

気象予報士・防災士 岸 真弓 様

3月3日ひな祭りの日に、2050回例会の卓話にお招きいただき、誠にありがとうございました。

「命を守るチカラ 天気と防災~広島市が直面する未来の天気」というテーマでお話しさせていただきました。

私は昨年3月まで、中国放送でテレビとラジオの気象キャスターを10年間務めました。現在は仕事の幅を広げ、司会や国際中医薬膳師としての活動も行っています。もちろん、気象予報士・防災士として、気象や防災に関する講演やイベント、メディア出演も時折行っています。

私が広島に来たのは2014年のことでした。その年、広島市安佐北区や安佐南区では、短時間の大雨による広島土砂災害が発生し、大きな被害がありました。私はちょうど中国放送の気象キャスターに着任したばかりで、地名や地形についての理解も十分ではない中、災害に直面しました。必死に対応しようとしましたが、力不足だったことが本当に悔やまれます。災害発生の翌日、現地へ取材に入りました。土砂に押しつぶされた家屋や、原形をとどめないほど潰れた車の光景は、今でも何度も夢に見るほどで、あの悔しさを忘れることはありません。

しかし、2018年7月には再び大きな災害をもたらした西日本豪雨が発生しました。停滞した梅雨前線や湿った空気の影響で、数日間にわたり強弱を繰り返しながら降り続いた雨は、多いところでは総雨量が500ミリを超え、記録的な大雨となりました。

2014年の災害は、線状降水帯による局地的な豪雨災害でしたが、2018年の西日本豪雨では土砂災害が同時多発的に発生し、被害が広範囲に拡大した点が特徴でした。

このような大災害に、わずか10年の間に2度も直面することになるとは、気象予報士としても信じがたいことでした。だからこそ、私は「どうしても広島の人たちの役に立ちたい」と強く思うようになったのです。

気象衛星やスーパーコンピューターの発展により、昔と比べて精度の高い天気予報が得られるようになり、私たちは日々その恩恵を受けています。例えば、時間ごとの降水予想を活用して、ゴルフやレジャーの計画を立てている方も多いかもしれません。しかし、それでもなお予測が難しいケースがあります。

広島の土砂災害のような豪雨や、記録的な猛暑といった「異常気象」は増加傾向にあり、これらは予測が困難なことが多くなっています。その一因として、地球温暖化を無視することはできません。

広島でも昨年の夏は、過去最も暑い夏となったことが記憶に新しいかと思います。今年の夏についても、最新の暖候期予報(6月~8月)では「暑い夏になる」と予想されています。

IPCCの予測によると、最悪のシナリオでは、今世紀末までに日本の気温は3.5度から6.4度上昇すると見込まれています。それに伴い、大雨や短時間の強い雨の発生頻度が増加し、強い台風の割合が高まり、台風による雨や風もより強くなると予測されています。

広島県においても、年平均気温は約4.3度上昇し、1時間に50ミリ以上の「非常に激しい雨」の発生回数は、現在の約3.4倍に増加すると見込まれています。

私たちは、未来の気候変化を知り、何ができるのかを考えなければなりません。

災害を完全になくすことはできませんが、被害を減らすことはできるはずです。自治体や企業・組織、そして個人単位でも、防災・減災の取り組みを進めていきましょう。

私も広島の役に立てるよう、気象・防災情報や、季節・暦に関する話題を、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSで毎日発信しています。ぜひチェックしてみてください。

また皆さんとご一緒できる機会を心より楽しみにしております。

本当にありがとうございました。

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