第1953回例会 会員リレー卓話「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」

下原 唯千夏

本日はタイトルにありますように、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」という内容のお話をさせて頂きます。実は、このタイトルにある精神障害にも対応した地域包括ケアシステムというのは、精神科及び精神障害者にかかわる機関や施設に向けて出された、厚労省からのミッションになります。

まず、地域包括ケアシステムというのは、住み慣れた場所で自分らしい生活を最後まで送れるようにサポートしあうシステムとご理解いただいたらいいかと思います。よく耳にする、年を取っても住み慣れた自宅で、生活を送る・・・という様なものと同じで、精神障害者も住み慣れた場所で自分らしい生活を最後まで送るようにサポートしあう地域づくりを行いましょうという意味になります。

とはいえ、精神障害と聞くと、怖いとか、暗い、よく分からない等の印象をお持ちの方も多いのではないかと思います。然しながら、精神科はメンタルヘルスケアを行うところですので、2015年から始まったストレスチェック制度など職場のメンタルヘルスケアにも関わる所ですし、民間に求められる障害者雇用率が2.2%になったところにも関係してくる所ですので、少し興味を持っていただきながら、お耳を傾けて頂きたいと思います。

最近の精神科の実情ですが、精神科に入院されている患者さんは今現在、日本に約28万人おられます。ご周知のとおり、認知症の患者さんは、年々増えておりますが、入院患者さんで一番多く割合を占めているのは統合失調症の患者さんになります。

そして、現在、厚生労働省から出されている計画によると、2015年~2025年の10年間で、7.9万人から9.8万人の入院患者さんを地域で生活出来るようにするという計画のもとで進んでおり、入院患者さんで最も多い統合失調症を含む多くの方が、地域移行をされることになると予測されます。精神疾患を持たれた方の回復及び、社会参加には、服薬等の医療的なケアの一方で、周りの人のサポートというのが、大変重要になります。

精神障害者にも対応する地域包括ケアシステムというのは、退院して、多くの精神障害者が地域で生活する上で、精神障害者の住居環境を確保し、医療・福祉・介護のサポート体制に加えて、精神疾患や精神障害者の生活についての理解をしてもらうための、啓発も重要になります。特に精神疾患の75%は10代後半から20代前半で発症する事もあり、今年度から高校の保健体育のテキストでは、精神疾患の予防や治療について学ぶ機会が設けられました。また、ヤングケアラーの問題の背後にも、家族が精神疾患を抱えているケースが多数あります。10代~20代前半は多感な年代で、そして、進学や就職など様々な環境の変化やストレスがかかる時期であり、自分や友人のメンタル不調に気づく事や対応について、知識として持つことは発症の予防や、早期治療・早期回復に結び付くための情報提供は、今後の日本の未来を背負う若者のためには重要なことだと思います。

本日、精神科の現状について、また、精神疾患についてお話をさせて頂く機会を持てたことで、精神障害にも対応する地域包括ケアシステムの柱の一つである、啓発に繋がる事がきれば、大変嬉しく思います。ご清聴ありがとうございました。