第1950回例会 会員リレー卓話「人生100年時代に向けて健康寿命を伸ばそう~がん予防新12ヵ条プラス~」

RI2710地区がん予防推進委員会グループ7担当委員
広島中央ロータリークラブ
児玉 哲郎

2017年90歳以上の高齢者が200万人を超え、人生100年時代が現実化している。人生100年時代を迎えると、従来の単純なライフステージ「学ぶ20年」「働く40年」「引退後20年」の変化では対応できず、柔軟な生き方を模索する必要がある。健康寿命とは、日常生活が制限されることなく元気に生活できる期間で、2019年は男性72.68年、女性75.38年(平均寿命:男性81.41年、女性87.45年)であり、平均寿命と健康寿命の差は縮小傾向にある。

厚生労働省は、2013年「健康日本21」第2次計画を策定し、国民の健康づくりの基本方針として①健康寿命の延伸と健康格差の縮小、②”がん“、糖尿病、循環器疾患、肥満等の生活習慣病の発生予防と重症化予防の徹底、③社会生活を営むための必要な機能の維持および向上、④健康を支え、守るための社会環境の整備、⑤栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、”歯・口腔の健康“に関する生活習慣および社会環境の改善をあげている。

がんの死亡者数は、2020年は 37万8385人(全死亡の27.6%)で、罹患数は2021年は100万9800例(男性57万7900例、女性43万1900例)と推計され、男性では前立腺(17%)、胃(16%)、大腸(15%)、肺(15%)、肝臓(5%)、女性では乳房(22%)、大腸(16%)、肺(10%)、胃(9%)、子宮(7%)の順であり、がん患者全体の5年生存率は2009年~2011年の診断例では、64.1%となっている。がんは遺伝子異常の病気であり、「がん遺伝子」(細胞増殖を促進させる働き)、「マイクロRNA」、「がん抑制遺伝子」(細胞増殖を抑制させる働き)、「DNA修復遺伝子」等の複数の遺伝子異常が一つの正常細胞に累積して発生する。検査で見つかる大きさになるまでには10年から20年かかり、また40歳を過ぎてがんが急増するのは、10-20歳代の生活習慣(喫煙・食生活)が関与するからで、食生活の改善等によりがんを予防することができる。さらに、がんは老化の一種でもあり、加齢とともにがんが増えるのは、遺伝子異常の蓄積増加と免疫力の低下による。

がんを予防するために「がんを防ぐための新12か条」(http://www.fpcr.or.jp/pdf/p21/12kajyou_2015.pdf)が提言されている。健康寿命の延伸による人生100年の健康維持には、自己責任に基づく健康意識の向上と共に、①禁煙: がん予防新12か条第1条/2条、②運動:同第7条、③正しい食生活:同第3条/4条/5条/6条、④定期的な検診:同第10条、⑤適切な体重維持:同第8条、⑥口腔・歯の健康が大切であり、がん予防新12か条をベースに、さらに“口腔・歯の健康”を加えると、生活習慣病の七大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患、腎疾患、肝疾患、糖尿病)の予防に結びつく。

そこで今回、がん予防新12ヵ条にプラスして口腔・歯の健康維持」を掲げた。とくに歯周病との関連が考えられる疾患は少なくなく、脳血管疾患、心血管疾患、メタボリック症候群などの生活習慣病や肝がん、大腸がんなどがあげられる。また、誤嚥性肺炎のリスクは高く、がんの手術や化学療法では事前に口腔ケアを行うことが大事なこととされている。

がん予防には一次予防(がんに罹らないようにする)、二次予防(がんで死なないようにする)があり、がんに罹るのは必ずしも防げないが、がんで死ぬのは防げる!という自覚をもって日々の生活に励んでいただきたい。