第1921例会 会員卓話「広島都市圏の不動産動向」

本日は大井委員長の御使命により、このようなお時間をいただき誠に有難う御座います。若輩者である私ごときが、諸先輩である皆様方に、広島都市圏の不動産市場動向などという大それたお話をさせていただくこと自体恐縮であり、逆に、ご指導を仰ぎたいほどのテーマで御座います。拙いお話ではあると存じますが、最後までお付き合いの程宜しくお願い申し上げます。

本日は、1.国内景気及び国内不動産動向 2.広島都市圏の不動産動向 3.今後の広島都市圏の市場動向 4.まとめの4つのテーマに分けてお話しさせていただきます。

まずは、1.国内景気及び国内不動産動向についてです。1.国内景気の停滞、岸田政権はマーケットより経済に慎重と見なされております。結果、経済回復のスピードが他の地域に比べて大変遅れております。

それも起因して、2.金融緩和継続をせざるを得ない状況です。アジアの成長、国内での投資マインドの対比が顕著であり、結果として、諸外国より出遅れております。

それを受け3.グローバル経済・アジア経済の伸長と遅れた国内経済を対比しますと、グローバル経済の実質GDPの成長率は、世界経済成長予測4.3%、ASEAN5経済成長予測5.2%、と当初より下方修正されたものの、我が国の成長予測2.8%よりはるかに伸張が良いのが現状です。我が国の成長率のカギは、今後のインバウンド関連政策への取り組みも大きな要素ではないかと思います。

4.J・リート(不動産投資信託)の拡大、高齢化による個人金融資産・個人資金が不動産市場を支えております。主要国の利上げ時期が前倒ししたのを受け、東証リート指数は下落しましたが、それにより利回り面で魅力が高まった事、資産価値が過去平均に比べ割安感が出た事や、10年国債利回りとを比較すると、3.83%まで拡大している現状を踏まえると当然のことかもしれません。

前述の要因が起因して5.外人機関投資家が国内市場に投資拡大しております。以前より我が国の不動産は、グローバルな割安感や、安定した日本経済が大変魅力的であります。それらが寄与しており、国内不動産市場への資金流入継続が予測されます。

最後に、6.サプライチェーンリスクの顕在化です。どの業界もそうですが、人件費の安いアジア等の諸外国で生産に頼っていた物資の高騰等がみられ、原価を押し上げている要因の一つとなっております。

 次に、現在の広島都市圏の不動産市場を見て参りましょう。

1.建築費等の高騰で、全般的に価格上昇が顕著。賃貸マンション建築費 2007年頃75万円/坪 ⇒ 現在115万円/坪おおよそ15年で1.5倍に

2.官有地のみならず、個人及び法人所有の中規模以上の土地取引が、相対取引ではなく入札形式に変遷している。最近では、広島市内中心部の希少地であれば、小規模でも入札取引になりつつあり、価格を押し上げる要因になっている。

3.広島市中区中心部や広島駅等の再開発案件が活発である。しかしながら、所有者の多い再開発案件の将来展望は、プロジェクト実現までに長期化が予測され、非常に厳しいとみる。

4.郊外の古い団地の高齢化が進み、街の新陳代謝が低下している。とある団地では、今年度の小学校入学者数ゼロの団地も。

5.商業用地においては、運送業や大規模小売店等のニーズが高い1,500坪以上の土地の供給が極めて少ない。広島は地理要因として、海と川と山に囲まれており平野部が非常に少ない。

 国土交通省発表統計不動産価格指数中国地方(2009年~2021年)(2010年を100として基準設定)を見てみますと、昨年の指数で、2010年よりおおよそ一割ほど価格の上昇がみられます。前述したような要因から、今後もその傾向は継続されると思われます。

 それでは、今後の広島都市圏の不動産市場動向を考察しましょう。賃貸市場に関しましては、・利便性の良い場所に立地するマンションの成約率が良い・以前は、新築で市内中心部にあればほぼ満室になっていたが、顧客の情報力が向上し一概にそうではない。・賃料は建築費等の上昇に伴わず、あまり変化はみられない。・単身用賃貸では、25㎡以下の物件は成約率が悪い。といった傾向が予測されます。

売買市場に関しましては、・官庁の物件が、今後数年、継続して供給される可能性大 (中央・地方財政の悪化)・建築資材及び原材料の高騰や、人手不足による建築工期の長期化等で価格は上昇。・一坪あたりの販売価格が上昇するため、販売面積を縮小しグロス価格を抑制する。・人気エリアとそうでないエリアの価格乖離が増大する。と、予測します。

まとめといたしまして、土地価格は、国土交通省『地価公示』によると、広島市内全域(安佐北区を除く)及び府中町・海田町・廿日市市は、地域によりばらつきはあるものの上昇しており、今後もその傾向が維持されると思われる。一方で、それら以外のエリアにおいては価格が下落傾向にある。これらは、総務省発表の『住民基本台帳に元づく人口、人口動態及び世帯数』で、世帯数が減少している市町と相関関係が認められ、今後もその傾向が継続される。

分譲住宅は、広島市内では、ファミリー層からの需要増加や、シニア層を中心とした郊外から利便性の高いエリアへの住み替えニーズ等もあって、分譲マンションの建設が増加。この間、広島市内では、地価上昇や建築コスト上昇の影響から、1戸あたりの床面積が縮小傾向にある。それに合わせて最近では、単身者やディンクスをターゲットにした1K~2LDKの供給も多くみられるようになり始めた。女性の社会での活躍による所得増加等が起因してかどうか、自分一人または夫婦二人での人生を楽しむという向きもあり、そこをターゲットに今後も継続して供給されると予想される。

ホテル建築は、インバウンド需要は戻ると予想している向きがあり、首都圏のみならず広島都市圏においても既にホテルディベロッパーの動きがある。彼らが更に活発に活動し始めると、中区中心部の商業地や広島駅周辺の土地価格の更なる上昇につながると思われ、コロナ以前の様相に戻ると予想される。

今後の課題といたしまして、まずは空き家問題があります。全国共通して、人口減少、経済の停滞が課題となるエリアが多数あり、広島都市圏の中にも例外ではないエリアが存在します。国交省が政策的に空き家解消を推進しており、所在者不明土地法の制定及び実施や、税制も後押し問題解決に動き出した感はあるが、その後の土地活用等でまだまだ先が見えない現状にある。

次に耐震問題です。広島市中心部では、耐震対策を満たしていない小規模建物が多く存在し、相続問題と併せて、総合的な対応が必要である。

以上

最後に、不動産価格等の経済と密接にそして複雑にかかわるものは大変予想しづらく、本日お伝えしたことも、ちょっとしたきっかけで大きく、しかも急速に変動していくものです。そのあたりを踏まえたうえで、あくまで私個人の私見だと認識ください。拙い話に長時間お付き合いいただき誠に有難う御座いました。

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